運命を理解する切り口03・ローレンツ方程式

      2018/07/11

前回の記事でこんなことを書いた。

近似式でも良いので各惑星のコンビネーションがおよぼす力を定量的に記述できる方程式のようなものを作ることができれば・・・(中略)ただし、その方程式は多分ナビエ・ストークス方程式やその近似方程式より複雑なものだろう。

これのカウンター(対抗案)となる、

「いや、その式は実はけっこうシンプルなんじゃない?」という考え方について、題名のローレンツ方程式とその特性であるカオス的ふるまいを取り上げ、さらにインド占星術の技法との類似性を考察する。

今回の記事は数学の微分常微分、そして特に偏微分について知識があると分かりやすいかもしれない。

3行でまとめ

・ローレンツ方程式と男女の三角関係は似ている?
・運命は本当に決定論的カオスなのか
・技法の数だけ運命の時輪を偏微分できる



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ローレンツ方程式とは

気象学者のエドワード・ローレンツ博士が導き出した非線型方程式。

彼は1960年に、初期変数を色々変えて初歩的なコンピュータシミュレーションによる気象モデルを観察していたところ、気象パターンが初期値のごく僅かな違いにより大きく発散することに気づいた。

これには次のようなエピソードが残されている。

計算結果の検証のため同一のデータを初期値として複数回のシミュレーションを行うべきを、二度目の入力の際に手間を惜しみ、初期値の僅かな違いは最終的な計算結果に与える影響もまた小さいだろうと考えて、小数のある桁以降の入力を省いたところ、結果が大きく異なった

この繊細な初期状態依存性はバタフライ効果と後に呼ばれるようになった。

また、これによりコンピュータによる気象の正確な長期予報が不可能であることが明らかになった。

ローレンツ博士はこの計算機を使ったシミュレーションに10個以上の複数のパラメーターを設定していたが、この後パラメーターをどんどん少なくしていっても繊細な初期状態依存性の特性が見られることに気付いた。

そして最終的に、3つの変数とたった3つのパラメーターの式でも、その結果が無限に複雑なパターンに行き着くことを発見した。

そのローレンツ方程式とは以下のようなもの。

難しそうに見えるが、式が表しているものは比較的シンプルだ。

変数は x、y、zの3つ、定数(パラメーター)はp、r、bの3つ。

ある時刻tのときに、x、y、zがどういう値をとるかを表している。

この式の理解にあたり、面白い例え話で説明しているサイトを見つけたので、注釈を入れつつそのままお借りしたい。

複雑系とは何か - 永井俊哉ドットコム
https://www.nagaitoshiya.com/ja/2000/complex-system-definition/

ここで三つの変数の変化が、自己と他者によって決定されていることに注目したい。

孫氏に「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」という言葉があるが、我々は普通自分の状態と他者の状態から自分の行為を決定する

だからローレンツ方程式は、例えば次のような三角関係にたとえることができる

今夫(xに相当)が自分の妻(zに相当)には関心がなく、

隣の家の奥さん(yに相当)に強い関心を持ち、

その奥さん(y)は、彼の妻(z)に気兼ねしつつ、彼(x)に好意を抱いている

としよう。

すると、ローレンツ方程式は、

(ある時間tにおける)夫(x)の行為は、自分(x)の気分と隣の奥さん(y)の行為によって決まる。

隣の奥さんの行為(y)は、自分(y)の気分と隣のご主人(x)と彼と妻の夫婦関係(x・z)によって決まる。

妻の行為(z)は、自分(z)の気分(b)と夫と隣の奥さんとの浮気関係(x・y)によって決まる。

と解釈できる。

相思相愛の男女の関係は安定しているが、三角関係となるとにわかに不安定になり、一定の状態に収斂することなく複雑な展開を続けることになる。

よく「三角関係は複雑だ」と言われるが、複雑ということは予測不可能ということであり、そしてストーリーの展開が予測不可能だからこそ、視聴者を惹きつけるテレビドラマの主題にもなるのである。

しかもシナリオライターには幸運なことに、初期条件を変えてやれば、バタフライ効果により、いくらでも違った展開のストーリーを生み出すことができるのである。

ここで、

p = 10(夫xの隣の家の奥さんyへの関心の度合い)
r = 28(隣の家の奥さんyの夫xへの好意の強さ)
b = 8/3(妻zがxとyの浮気を疑う強さ)

を代入するとこのような軌道(ローレンツ・アトラクタ)を描く。

この動く点は、決してどこかで交わることはない。

しかしながら、x,y,zの取りうる値はこの軌道のうちのどこかである。この軌道から外れた場所に突然行くことはない

また、上の初期条件のp、r、bの値が少しでも違うと、全く違う軌道を描く。

運命は本当に(決定論的)カオスなのか

ここから、ローレンツ方程式とインド占星術の技法について比較を行っていく。

パラメーターを代入する

これは各惑星が在住する星座とその度数を入れていく行為に他ならない。

これは、例えば太陽はおうし座23度15分在住というのを以下のように表現するようなものだ。

Sun(a,b) = (Taurus, 23°15')

(ここで、aは在住星座、bはその星座での在住度数)

繊細な初期状態依存性(ほんの少しの初期パラメーターの違いで軌道が全く変わる点)

これも、出生時の人の運命をうまく表しているように見える。

同じ場所で産まれても、出生時間が数秒でも違ってくれば高次の分割図からアセンダントが異なってくる。

アセンダントがうお座の29度59分とおひつじ座0度では、角度の差だけで言えばたった1分の違いだが、アセンダントが変われば各惑星の支配室も違うのでリーディング時の扱いは当然異なってくる。

決定論的に一定の軌道を描いて動く

初期条件のパラメーター(各惑星の情報)を入れてしまえばあとは決定論的に一定の軌道を描いて動くのは、

ヴィムショッタリダシャー等の各種ダシャーやトランジットによってその人の生涯にわたる振る舞いを予め予測できることと類似性を見出せる。

ここでダシャーの理屈(各惑星の巡る順番やその年数期間)はとりあえず横に置いておき、ダシャーを使うとその人の大まかな運命の流れをつかめるというのは経験則で分かっているし、このことは自分もリーディングの実力なりに納得できているつもりだ。

特にヴィムショッタリダシャーのマハーダシャーが変わるときは、主観的にも客観的にもその前後の時期が人生の転換点であることが多い。

カオスという言葉に惑わされるな

先の記事で書いたが、自分が引っかかっているのはこの「決定論的法則に従う」という部分だ。

ここでいうカオスとは、決定論的カオスについて言っている。

・カオスの定義と特性

ある初期状態が与えられればその後の全ての状態量の変化が決定される系を力学系と呼ぶ。特に、決定論に従う力学系を扱うことを強調して決定論的力学系とも呼ばれる。

カオス理論において研究されるカオスと呼ばれる複雑で確率的なランダムにも見える振る舞いは、この決定論的力学系に従って生み出されるものである。

この点を強調するためカオス理論が取り扱うカオスを決定論的カオス(deterministic chaos)とも呼ぶ。

(ローレンツ方程式のように)複雑で高次元の系ではなくとも、(中略)確率的ランダムに相当する振る舞いが生起される点が決定論的カオスの特徴といえる。

根拠なしで言うのは気が引けるが、人の運命は「決定論的法則に沿って動くかもしれないが例外が必ず出てくる」という点を強調したい。

一旦その軌道さえ分かれば(出生時のホロスコープが確定しダシャーとトランジットさえ分かれば)その後どうのように動くのかが絶対に予想できるなどというのは傲慢だ。

イメージとしては、上の軌道で動く点をビリヤードのキューで突く行為を想像してほしい。

キューで付く強さによって、突いたあとに玉の軌道がどうなるかなんて誰にもわからない

突く力が弱ければすぐさま復元力が働き元の軌道に戻りそうなものだが、突く力によっては玉が明後日の方向に行ったまま帰ってこないかもしれない。

そして、現実では玉(人間)はさまざまなキューで突かれまくっている。

そのつついてくるキューは親であり、兄弟であり、じいちゃんばあちゃんであり、家族であり、友達であり、恋人であり、配偶者であり、子どもであり、先生であり、先輩であり、後輩であり、会社の同僚であり、部下であり、良きライバルであり、あるいは敵かもしれない。

確率は低いかもしれないが、不運にもそれは、地震や洪水のような天災の形であったり、通り魔やテロリストによる被害かもしれない。

「玉がここくらいのタイミングでこれくらいの強さで突かれて軌道が少しずれるかもしれない。多分・・・」と予測するのが限界で、正確にどのキューがどのタイミングでどれくらいの強さではじかれてその後どこへ玉がいくのかを正確に予想するのは不可能と言ってよい。

(言って"よい"と言い切っている理由は別の記事で説明したい)

話が飛躍してしまったが、言わんとしたいことが何となく分かってもらえれば幸いである。

インド占星術の技法と偏微分の考え方との類似性

前々から感じているのが、インド占星術の色々な技法は運命という「ナニカよく分からない仕組み」に色々な「ものさし」を当てる行為であり、それは数学でいうと偏微分とよく似ているという点だ。

偏微分に関する詳しい説明は省略するが、イメージを表現するために以下のサイトから方程式を拝借する。

偏微分の意味と高校数学への応用 | 高校数学の美しい物語
https://mathtrain.jp/henbibunimi

高校の微分の知識があれば、以下の式がどういう変形をしているのか理解できるはずだ。

x,yの2変数で構成される式f(x,y)に対して、各々の変数x、変数yで微分するとこれらの式が得られる。

ここで例えば、

変数xで微分した式をもとに積分する ⇒ ヴィムショッタリダシャーを使って未来を予言する

変数yで微分した式をもとに積分する ⇒ チャラダシャーを使って予言する

という感じに言い換えることができる。

ここで、どちらか一方の変数で積分しても元の式を復元できない点に注目してほしい。

この式でいえば、変数xで微分した方程式だけを元に積分しても元のf(x,y)の +y^3と +y の項を復元できない。

一方で、変数yで微分した方程式だけを元に積分しようとしても、今度は +x^2 の項が復元できない。

しかし、この2つの偏微分の方程式が手元にあれば、各変数で微分時に落ちてしまった項が分かるため元の式f(x,y) = x^2 + y^3 + x + xy が復元できる

KNラオ先生がホロスコープのリーディング時に複数のダシャーを併用しなさいと言っているのは、「ある変数による偏微分によって落ちてしまった項を、違う複数の変数を使って積分することで少しでも拾う努力をしなさい」と言っているように自分は聞こえる。

もちろん実際の運命の仕組みの方程式(?)はこれよりもっと複雑だろうし、使われている変数がいくつかも全く想像できない。

しかし、ある変数で微分すればそれがどういう性質を持つ関数なのか、その情報の一部分を掴むことができる。

それをもとに積分すれば、全部ではないがその式の一部を復元できる。

さらに複数の変数で積分すれば、その式の全体像がなんとなくつかめてくる。

そして、インド占星術には精度の良い「ものさし」(ある変数で偏微分する方法)が各種揃っている(ように少なくとも自分は思う)。

これらをうまく組み合わせることで、その式の全容が更に見えてくるようになるはずだ。

そう確信するから予言できるとも言える。逆にそうでなければ占星術なんてやっていられないし、ここまで各種技法は伝承されなかったはずだ。

所感

最初の記事で書いたシミュレーション仮説ですが、どうやら静かなムーブメントになっているようです。

興味があれば以下のwikipediaの項目を読んでみることをお勧めします。

・wikipedia - シミュレーション仮説

シミュレーション仮説(シミュレーションかせつ)とは、人類が生活しているこの世界は、すべてシミュレーテッドリアリティであるとする仮説のこと。

シミュレーション理論と呼ぶ場合もある。

・wikipedia - シミュレーテッド・リアリティ

シミュレーテッド・リアリティ(英: Simulated reality)とは、現実性(reality)をシミュレートできるとする考え方であり、一般にコンピュータを使ったシミュレーションによって真の現実と区別がつかないレベルでシミュレートすることを指す。

シミュレーション内部で生活する意識は、それがシミュレーションであることを知っている場合もあるし、知らない場合もある。最も過激な考え方では、我々自身も実際にシミュレーションの中で生きていると主張する(シミュレーション仮説)。

これは、現在の技術で実現可能なバーチャル・リアリティとは異なる概念である。バーチャル・リアリティは容易に真の現実と区別でき、参加者はそれを現実と混同することはない。シミュレーテッド・リアリティは、それを実現する方式はどうであれ、真の現実と区別できないという点が重要である。

シミュレーテッド・リアリティの考え方から、次のような疑問が生じる。

・原理的に、我々がシミュレーテッド・リアリティの中にいるかどうかを知ることは可能か?
・シミュレーテッド・リアリティと真の現実に何か違いはあるか?
我々がシミュレーテッド・リアリティの中に生きていると知った場合、どうすべきか?

 - 考え方